最近は終活、エンディングノートと言った言葉をよく聞くようになりました。とは言えまだ一般的に普及しているとはいえません。
いずれくる自分の死と向き合うことは避けられないとはいえ、なるべく先送りにしたいのがホンネだからでしょう。
しかし、人生いつどこでどんなことが起こるかわかりません。もしもの場合に残されたものが困らないように準備することは大切なことです。
遺言書があっても、書式に則ったものでないと認められず、財産があってもなくても「相続」で兄弟姉妹が醜い争族とならないためにしたいことは元気なうちの遺言書です。
遺言書~相続のトラブルを未然に防ぐ備え
被相続人(財産を残す人)の生前の意志が確認できるもの、遺言書などが残っていない場合財産は法定相続人*に法に基づいて分配されます。
そこで何も問題がなければ手続きが面倒だったり時間がかかったりはしますが問題なく相続が完了します。
しかし、次のような問題が合った場合裁判にもつれ込んだり、多額の借金を抱え込むことになったりしますので相続のトラブルを防ぐためには効力のある遺言書の作成が一番の備えと言えます。
・不動産が主な財産で売却しないと相続ができない(相続税が払えない等)
・被相続人に財産を上回る借入金がある
・生前贈与分と考えられる額をすでに受け取っている相続人がいる
・法定相続では不満のある相続人がいる
・相続させたくないと考えていた相続人がいる
など、理由は様々です。
◆法定相続
* 配偶者と子が相続人 それぞれ2分の1
* 配偶者と直系尊属が相続人 配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1
* 配偶者と兄弟姉妹が相続人 配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
遺言書作成のポイントは「元気なうち」!
遺言書は公証役場で証人二人の立ちあいのもと作成するのが確実な方法です。財産のすべての目録を持ち、相談に行きましょう。
問題は、被相続人が公証人の問いかけに答えて、誰に何を残したいのかどのように相続させたいのか明確な意思表示が出来ないと遺言書の作成が出来ないことです。
高齢で耳がかなり遠くなった方、理解力が衰えている方はまずこの方法で遺言書を作ることは出来ません。筆談は認められていないためです。
では、自筆で遺言書を書き残すのはどうでしょうか。この場合確かに本人が書いたという証明と遺言書の内容が被相続人、相続財産、相続人、書いた年月日等 明確に特定できれば有効な遺言書として認められることが期待できます。
しかし、万が一相続人の誰かが不服を申し立て裁判になった場合には 絶対の存在とはならない可能性も大きいのです。
こういった意味で終活やエンディングノートの普及で自分の死後を元気なうちに考えるようになってきたのは望ましいことでしょう。
多額の借金を背負い込まないための相続放棄
好ましくはないことですが、被相続人が多額の借り入れを返済せずに残して無くなる場合もあります。借り入れを上回る相続財産がル場合は良いのですが、そうでない場合は相続放棄をおすすめします。
注意しなければいけないのは、借金の部分だけを放棄することは出来ないということです。*
すべての権利を放棄する必要があり、かつ自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に申請する必要があります。
相続放棄申述書、被相続人の住民票の除票、戸籍謄本など。申述人一人に月収入印紙800円と連絡用の郵便切手が必要です。
*相続の種類
- 単純承認: 相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ
- 相続放棄: 相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない
- 限定承認: 被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続 によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ
遺留分
遺言者は原則として財産を自由に処分する権利を持っていますが、本来相続の権利を持っているものが不服を申し立てた時に認められる財産が遺留分です。
遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人に留保された、相続財産の一定の割合 のことです。
遺留分をもらえなかった相続人は「遺留分減殺請求」の権利を持っています。相続を侵害された限度で贈与、遺贈の効力を失わせることが出来ます。
ただし、このことを知ってから1年以内、あるいは知らなくても10年以内に行使しないと消滅してしまいます。
またこの権利を有するのは配偶者、子、著系尊属だけです。
◆遺留分
1 直系尊属のみが相続人である場合 は 遺産の3分の1
2 その他の場合 は 遺産の2分の1
まとめ
終活とは人生をどのように終わらせたいか元気なうちに考えること、エンディングノートは亡くなった時に周りが困らないように連絡先や銀行口座などを記しておくものです。
同時に相続についても元気なうちに考えるきっかけとなりますね。
一定の年齢になると漠然としてですが、万一のことを考えるとあれやこれや不安や心配なことばかりになりがち。
高齢の方にとって自分の死について考えることは、なんだか死期を早めるような気がする場合が多いようです。食べたものを「それ、古かったけど大丈夫だった?」と言われた途端に腹痛がして調子を崩すようなものなのです。
子どもにとっても親が終活を始めたことを知ることはやがて親の死と向き合わなければいけないという現実に直面し、重荷になってしまうこともあります。
終活、エンディングノート、就活コンサルタントなどは自分にも周りにも万一の場合のお守り、のような存在となりつつあると言えましょう。
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