老いも若きも終の棲み家として意識していたお墓について、少子高齢化、核家族化や夫婦間、親子間での意見の違いなどからいろいろな問題が浮き彫りになってきています。
特に嫁ぎ先のしきたりに従うものとされがちだった女性のお墓への意識変化は大きく、時として摩擦を生む事もあります。
更に独身女性は自分でお墓を建てても、無縁墓になってしまう不安も拭えません。そこから生まれた新しいビジネスチャンス。
利用者も増え、メディア等でも取り上げられることが多くなっている新しい形のお墓や葬儀のかたちとは?
従来のお墓についての意識の変化や時代のながれから、改めて墓問題を女性の立場から考えてみました。
目次
1.新しい「お墓と葬儀」のかたち
いわゆるお寺の墓地、公園墓地などのほかに現代ならではの墓地、納骨、葬儀が増えてきました。散骨もその一つです。
故人の意志が尊重されるほかに、多くは通常のお墓と比較するとお金がかからない、という利点もあり年々増えてきています。
メディア等でも取り上げることが多くなっていますが、どんなお墓・葬儀があるのか一部を簡単に紹介しましょう。
1-1 散骨
散骨の例 | 費用(参考) | 内容 |
---|---|---|
樹木葬 | 40万円~50万円 | 墓石の代わりに花木を植え、その下の地中に遺骨を埋めます。さくらの樹の下が特に人気があります。 |
バルーン宇宙葬 | 20万円 | バルーンの中に遺骨をいれヘリウムで膨らませて成層圏で散骨します。 |
海洋自然葬 | 5~25万円 | 葬儀会社のチャーターした船で遺族または代行業者が遺骨を沖で散骨します |
この他にも
沖縄の海に面した共同墓地
・県外からの問合せが増え、送骨サービスがあります。送骨~永代供養まで9万円。
骨を固めたペンダントや置物
・身近で安価な供養方法。3万円程度~
駅前のハイテクビル型納骨堂
・50年間85万円~ 管理費:約1万3千円(近隣の墓相場は300万円)
など新しい形のお墓が増えています。
散骨には埋葬許可証も分骨証明書も必要はありません。
法的にはどこに散骨してもよいのですが、様々なトラブルも考えられるため散骨サービスを利用することをおすすめします。
特に陸地への散骨は墓地内などにすることがよいでしょう。念のため、地元の自治体に確認することをお勧めします。
*東京都の「植林墓地」2013年には前年の10倍に当たる1万6千人近くの応募が有りました。管理用は不要で利用料は最高一人13万4千円です。
散骨に関する留意事項(出典: 東京都福祉保健局)
●散骨を行うときに留意することは何かありますか。
海や川での散骨では、水産物などへの風評被害が生じるおそれがあります。また、山での散骨では、土地所有者や近隣の人とのトラブルが生じた例、撒かれた骨を目にした人からの苦情や農産物への風評被害のおそれがあります。
こうしたトラブルが生じないよう、人々の宗教的感情に十分に配慮することが必要です。●自宅の庭に散骨してもよいですか。
散骨は、死者の遺骨を自然に還すという考え方、いわゆる「自然葬」として海や山などで行われるようになったものです。
人骨に対する感情は人により様々であり、焼骨を撒けば、風で飛ばされたり、住まいのそばに骨が撒かれたということで気分を害する人も出てきます。
なお、個人が庭などに墓地をつくることは法令上認められていません。
(一部抜粋)
ペット合同墓(150万円~ *墓石、永代使用料含む)
家族の一員として過ごしたペットと一緒に入れるお墓です。
ペットの遺骨は法律上一般廃棄物の扱いなので実施されているのは一部の民間霊園のみです。
1-2 納骨堂と永代供養墓
納骨堂
骨壷と位牌程度がおけるスペースに個別に遺骨を安置する、いわば室内のお墓です。仏壇形式のものも有ります。
通常のお墓と同じく維持管理費を支払い続ければ永代使用ができます。
一定期間(三十三回忌までなど)個別に安置した後は、永代供養墓などの合祀墓に移して供養することが多いようです。
お参りは共同の場合とそれぞれの遺骨の前に行って出来る場合とあります。
永代供養墓
子どもがいない、娘が嫁いでお墓を継ぐ人がいない、生涯独身等の場合、お寺が家族に変わって管理、供養してくれます。
一つのお墓に沢山の人が入ることから「合祀墓」、「合同墓」、「合葬墓」などとも呼ばれます
維持管理費は必要ないことが多いです。
2. 多様化するお墓の価値観
お寺の檀家*制度が希薄になっている現代では公園墓地なども費用の点から人気がありますが、お墓はお墓。
昨今ではいわゆる「◯◯家の墓」には入りたくないという希望が増えています。
特に「嫁」という立場にある女性には複雑な思いが。
2-1 女性の意識変化とお墓への不安
結婚すると、相手の家の墓に入るのが当たり前という暗黙の了解が存在する墓問題。
もちろん同じお墓にはいるものと思う女性も多いです。
しかし最近では、それに違和感を覚える女性が増えてきました。むしろ入りたくない、というケースもあるのです。
婚家のお墓が遠方にある場合はなおさらです。子どもたちに負担を掛けたくないという思いがあります。
子供がいない場合は跡継ぎもおらず、知らぬ土地で無縁仏墓にはなりたくありません。
先方の家族と折り合いが悪かったりして同じお墓に入るのは嫌!ということも多いです。
独身の場合は実家のお墓には入りづらい(兄弟が管理しているなど)あるいは跡継ぎがいないという問題も。
かと言って何も準備しないのも不安です。自分の墓を建てても無縁墓になるのは怖いし、お金もかかる。
そこで散骨と言った新しい形を生前に選択する女性が増えているのです。
2-2 帰省と墓参り
毎年お盆の時期、帰省客であふれる新幹線、大渋滞の高速道路がニュースになります。お盆、といえば実家に帰省してお墓参り、というのが定番ですね。
先祖に感謝の気持ちを込めてお墓参りをするのが当たり前、という意識が働いています。
しかし、現代はこれも様変わりしつつ有ります。
一つには少子高齢化でお墓を引き継ぐ人が減ってきていること。
帰省にかかる時間と金銭的負担から帰省自体しない人も増えています。
また仕事や家族の時間を優先したりと「家制度」の意識が薄れ個人の都合を優先するようになってきたことも影響しているでしょう。
お墓に対する価値観自体が変化してきていると言えます。
3.現代の墓問題
全国で管理するものが解らない無縁仏の墓が増加しています。
これは単に墓地が荒れるだけでなく、特に都市部など墓地自体が少ない地域では深刻な問題です。
墓石の不法投棄など大きな社会問題ともなっています。
3-1 墓石の不法投棄
無縁墓はお墓の承継者や親類などと連絡がつかずに放置されていますが、一定の手続きをとった後撤去することもあります。
墓地が荒れるのを防いだり、利用できる区画を増やすためにも墓の撤去で更地にする必要もあるのです。
無縁墓の墓石は業者に依頼して撤去されますが、その不法投棄があとを絶ちません。まさに墓石の墓場となっているのです。
不法投棄した業者が逮捕された場合は、撤去が指示されますがほとんどがお金が無くて処理できないままとなっています。
少子高齢化が進み、独身者が増えていけば墓の跡継ぎもいなくなり、無縁墓も増加することは避けられません。
3-2 改葬、分骨
遠方にあるお墓を引き継ぐ場合(承継と言います)、墓参りに費やす時間とお金の負担がキツイと言った場合にオススメなのが改葬、あるいは分骨です。
改葬の場合は手続きに時間がかかったり、結構な額の費用がかかりますが、分骨は寺院や霊園の許可だけで公的な手続きは必要なく、改葬の6~7割り程度の費用でできます。
改葬
お墓の引っ越しです。許可が必要なので遠方の場合は時間がかかることもあります。
現在の墓地のある市町村長の発行する改葬許可書をもらいましょう。
- 墓地のある市町村改葬許可書の用紙をもらってきて必要事項を記入します。
- 用紙には墓地を管理する管理責任者の印鑑が必要です。
(現在利用中の墓地の管理人に埋葬証明書をもらう。)
(新しい墓地の管理者から受け入れ証明書をもらう。)
新しいお墓をたてる墓地の管理責任者に改葬許可書を渡せば終わりです。
改葬には墓石の撤去費用、閉眼供養料などに50万~100万程度、更に新しい墓地の購入費などがかかります。
場合によっては墓石の持ち込み不可や引越し先に合わないなどの理由で処分費、新たな墓石の購入費がかかることも。
新しい墓地を探すときのヒント
場所選びも重要です。家の近くでは墓地の値段が高いけれど、ちょっと移動すると安くなることも。
お墓参りがしやすく費用を抑えられる場所を探してみましょう。
一般的にお寺よりも公共霊園などの方が安いですが、倍率が高い、そもそも場所が限られます。
墓地の広さや形態にとらわれず、絶対に譲れない条件だけに絞って探すのもひとつのポイントです。
分骨
2つのお墓にわけて納骨する分骨は、実家のお墓を引き継ぐ親族がいる場合におすすめです。
- 公的な手続きは必要ない
- 寺院や霊園の許可だけで良い
- 新しいお墓を作る費用だけで良い
遺骨と墓石の移動の費用は多少かかります。
お墓の移動では現在地、新しい墓地どちらでも読経をお願いしましょう。
3-3「家」のお墓に入れる人についての誤った認識
「長男が引き継いだお墓には、男兄弟は入れない」
「そのお墓に入ると遺言がある」
「関係者で話し合って決める」
などいろいろな認識がありますが、そのお墓に誰が入れるかを決められるのは
お墓の持ち主(使用権者)だけです。
使用権者がなくなった場合は承継した人(お墓を相続した人)で、通常の遺産相続とは無関係に決まります。
更に墓地を管理する者の許可が必要となります。一般的に使用権者の法定親族である6親等までとその配偶者は認められています。
そのお墓に誰が入れるのか、家族、親類縁者が話し合って決めることも多いですが法律的に口出しする権利は一切ありません。
あくまでも使用権者の意志が全てです。ただし、費用もすべて使用権者が負担します。他の関係者に負担を依頼することはできますが、強制力はありません。
参考: 主な地域のお墓にかかる平均的な費用(出典:お墓案内センター 2013年
広さ(㎡) | 永代使用料(円) | 墓石(円) | 総額(円) | 年間管理費(円) | |
---|---|---|---|---|---|
東京都・23区 | 0.69 | 179万8千 | 179万8千 | 309万 | 1万7700 |
東京都・郊外 | 1.25 | 79万7千 | 135万2千 | 214万9千 | 1万1600 |
神奈川県・横浜/川崎 | 1.25 | 73万7千 | 153万7千 | 227万4千 | 1万2600 |
神奈川県・郊外 | 1.3 | 45万7千 | 141万9千 | 187万6千 | 8400 |
千葉県 | 1.62 | 55万2千 | 141万6千 | 196万8千 | 7200 |
埼玉県 | 1.13 | 49万8千 | 136万8千 | 186万3千 | 9300 |
愛知県 | 1.33 | 43万8千 | 105万2千 | 145万 | 6800 |
大阪市 | 0.6 | 218万8千 | 117万3千 | 236万1千 | 1万800 |
大阪府 | 1.28 | 47万2千 | 105万5千 | 152万7千 | 5300 |
京都府 | 1.35 | 53万6千 | 118万9千 | 172万5千 | 4700 |
福岡県 | 2 | 40万4千 | 114万8千 | 155万2千 | 5500 |
3-4 送骨
時代の流れ、と言いましょうか。遺骨をゆうパックで送り供養する「送骨サービス」を埼玉県熊谷市の曹洞宗のお寺、見性院が2013年10月から始めています。
永代供養の基本料金は送料別で3万円です。
申し込みはホームページ等からでき、専用の段ボール箱に骨壷を入れて送ると本堂で供養後永代供養等に合同納骨されます。
日本郵便のゆうパックだけが遺骨の配送が可能とのこと。
遺骨を宅配便で送る、ということには相当反論があり、違和感を覚える人も多いでしょう。
なぜ送骨サービスが生まれたのか。そこには全国にいる遺骨を巡って困っている親族と行き場のない個人を供養したいという見性院、ご住職の思いがあります。
- 親類関係が良くない
- 供養したいが健康上の問題でお寺に遺骨を持っていけない
核家族化で希薄になった親戚関係や高齢者の連れ合いの死、孤独死、内縁者の扱いなど様々な理由で浮かばれない人たちがいます。
近隣の檀家からの相談があるとご住職は遺骨を引取リにいかれていました。
そのような事情のある遺骨は全国にもあるはす、しかしそれらを引き取りに出かけるのは無理な話です。
しかし、遺骨を送ってもらえれば供養することが出来る、僧侶としてそういった遺骨を受け入れなければ、と始められたサービスです。
通常の供養と違うのは、送骨ということだけ。その他は同じ永代供養がされます。
4.変化するお墓の意識~代々継ぐものから個人のものへ
「先祖代々の墓」と言いますが、実はお墓が普及し始めたのは江戸時代中期。それまではそのまま捨てる「風葬」でした。
「家墓」となって代々受け継ぐものになったのは明治政府が定めた民法によります。
長男が家督を相続し、財産、お墓などを承継するとしました。そして土地を有効活用するために土葬から火葬へと変化したのです。
現代の新たなお墓や葬儀の形は、時代の流れにそった変革といえるかもしれません。
継ぐものがいない無縁墓の増加、家制度に囚われていた女性の意識変化による多様化も後押ししています。
お墓は継ぐものから個人のものへと変わり始めています。
まとめ
お墓についての意識は時代の流れで変わる、ということは歴史からも明らかです。
少子高齢化、女性の意識変化、建立にも維持管理にもお金のかかる従来のお墓の後継者問題や、無縁仏墓の増加などから新しい形の葬儀、お墓も増えています。
特に婚家の墓にはいるもの、とされがちだった「嫁」の意識が大きく変化しているといえる現代。
更に生涯独身で、お墓を建てても無縁墓になるのでは、と終の棲家に不安を覚える女性も多くなりました。
また、墓地等の高騰で高額なローンを組んでまでお墓にこだわる必要があるのか、というお墓自体への意識の変化も進んでいます。
お寺や寺院などのお墓と比較して割安な散骨サービスが女性に人気であることも、現代ならではの墓事情と言えるでしょう。
自分のお墓が無縁墓になる不安も解消され、また残されたものへの金銭的・精神的・時間的な負担を軽減することもできます。
今後も女性の意識変化に伴いニーズは増え続け、新たなお墓の形も生まれ続けていくでしょう
まさに今、墓問題に直面している女性だけでなく、お墓については誰もが考えておくべき問題です。
⇐フリーランスの飲み会の幹事選びを絶対失敗しない3つのコツへ
借り入れ比較と見直しトップへ⇒
総合トップ節約精鋭部署の借り入れ削減術トップへ⇒